天気予報大外れ

豪華なお弁当



昨年同様早朝3時半に起床し、ホテルの用意してくれた
お弁当を食べ、6時までにはスタート会場に着くようにと
早めにホテルを出ましたが…だいたい半分くらいまで
行った時、ごんぞう氏が「サングラスってどうしたっけ?」
と言い出しました。スイム用のゴーグルは、家からも
持って行っていましたが、昨日会場のお店で良い品を見つけ
購入したので、サングラスは持参したゴーグルと一緒に
バッグの奥にしまったままで、すっかり忘れていました。
慌ててUターンしてホテルへ戻り、サングラスを持って
会場へ向かいましたが、到着したのは6時を少し過ぎた頃でした。
初っ端からこんなミスして、嫌な予感がしたのですが…。


大慌てで昨日用意した補給食をバッグに入れたり、大混雑の
男子トイレに並んだりしている内に時間は過ぎ、
そろそろ試泳を…と、スイム会場へ向かっている時に
そのアナウンスは入りました。「ゼッケンナンバー326の
ごんぞう選手、タイヤから音がしているそうで、パンクかも
しれませんので至急確認してください」
!!! ごんぞう氏は血相を変えてバイクの所へ戻りました。
前のタイヤを押さえる彼。「…前は大丈夫。後ろか?」
後ろのタイヤを押さえる彼。「…? 全然何ともない。
カチカチだよ」私も押さえてみましたが、確かに前も
後ろもタイヤはカチカチです。2人して首を捻りつつ
スイム会場へと歩いていると、3人ほどの人が固まって
タイヤを外して「あーあ、こりゃいかんわ」とパンク修理
らしき事をやっているのが目に入りました。
どうも番号を間違えられたようです。ホッと胸を撫で下ろし
ましたが、ごんぞう氏は「もう『終わった』って思ったよ」
と言ってました。そう、修理していたパンクしていた人の
タイヤはクリンチャーと言って中のチューブを交換すれば
すぐ直るタイプなのですが、ごんぞう氏のバイクのタイヤは
勝負タイヤでチューブラーと言い、チューブが無いタイプで
交換も物凄く手間がかかるのです。本当、間違いでよかった…。


そんなこんなですったもんだありましたが、無事にスイムが
スタート。私はごんぞう氏が折り返しで一旦陸に上がるのを
見届けてからスイムアップの場所へ移動しました。
今回の私の一つ目の役目、脱いだウェットスーツを受け取る
ためです。昨年そうやって旦那さんが脱いだウェットを
受け取っていた奥様がいたのを見て、私もそうすればよかったと
思ったからです。ただでさえスイムが苦手なごんぞう氏、
少しでもトランジットでの時間短縮に繋がればと思って。
そしてスイムスタートから1時間半程が経過し、ごんぞう氏が
上がってきました。計画通り、彼は脱いだウェットを私に渡し、
得意なバイクで颯爽と漕ぎ出して行きました。
昨年はここですぐにホテルへ戻ろうとして通行止めで全く
動けなかった事を教訓に、今年は車の中で時間をつぶし、
通行止めが解除になった10時過ぎに、ゆっくりとホテルへ
車を走らせ、ホテルに到着したのは10時45分でした。


ここからは最も退屈な時間です。バイクは180キロの長丁場。
5時間もしくは6時間は帰ってきません。私はその間、
ホテルの部屋でパソコンやらテレビやらで大会の現状を
知る事にしました。…が、テレビでも公式HPでも
やるはずだった「実況放送」が行われていません。
「どうして?」とよく見てみると小さな字で「悪天候などにより
実況放送が出来ない場合がございます」とあり、これが
原因か…と、私は恨めしく窓の外を眺めました。
スタート前からどうにも怪しい雲行きで、行きの車の中では
パラパラと雨が降り出し、「わ! 雨! 最悪!」とがっくり
していましたが大降りにはならず、すぐ止んだのでホッとして
いたのですが、スイムが終わる頃、真っ暗な空から再び雨が。
私の周りで応援していた人たちも「雨? うそー 傘持ってない」
と慌てた様子で、それでも私は「天気予報では今日は雨は降らないと
言ってたし、傘指数も20%で『傘は必要ないでしょう』だった。
大丈夫。すぐ止む」と、心の中で言い聞かせておりました。
しかし、一旦は止んだ雨はレンタカーでホテルへ移動中に
小雨から本降りに。ホテルに着いてからも、止むどころか雨は
酷くなる一方です。このせいで楽しみにしていた実況も無しとは。
天気予報がこれほどあてにならないとは、思いもしませんでした。


それでも気を取り直し、ネットでごんぞう氏の途中通過タイムを
調べ、バイクのフィニッシュ地点へ向かいました。
ここでも私には二つ目の役目、ランへ向かうごんぞう氏に
ガーミン(GPS機能付きのランナーズウォッチ)を
手渡す仕事が待っています。これは別にわざわざ手渡さなくても
前日に袋にいれて預けておけば、トランジットでスタッフさんが
渡してくれるのですが、やはり精密機械でもあるし、手渡しが
出来るならその方が万全なので、昨年もそうしました。
そしてバイクを予想以上のタイムで終えたごんぞう氏がやってきて
無事にガーミンを渡し、彼は最後の種目、フルマラソンへ向かいました。


私はまたホテルの部屋へ帰り、計画を立てました。ランパートでも
私には役目があります。出来るだけ身軽に走りたいごんぞう氏は
補給食を持っていないので、それを渡す役目です。
ランのコースは1周14キロを3周回する周回コースです。
なので、私が応援ポイントで彼に補給食を渡すチャンスは3回あります。
私はタイミングを見計らい、一度目の「動くエイドステーション」に
なるため、ホテルを出発しました。ホテルから応援ポイントまでは
徒歩10分程です。大体の時間なので、結構待ちましたが
坂を上ってくるごんぞう氏を見つけ、何種類かある補給食を見せました。
「どれがいい?」「小さい奴」私は一番小さい袋の補給食を
ごんぞう氏に差し出しました。ところが彼は「それじゃなくて、
もっと小さいのなかったっけ?」「これしかないよ」「じゃあ…
それでいいや」と、渋々という感じで私から受け取りました。
それから私は大急ぎでホテルへ取って返し、部屋中探しましたが
彼の言う小さい補給食は見つからず(ごんぞう氏の勘違いで、彼の
言ってた補給食は元々ありませんでした)、手元にあるだけの
補給食だけ持って、応援ポイントへ向かいました。そしてまた目測を
誤り、随分待ってからごんぞう氏の姿が見えました。補給食を差し出すと
「いい。もう食べ物は食べられない」と、首を横に振りました。
かなり苦しそうなごんぞう氏に「頑張って!」と声を掛け、彼の姿が
見えなくなるまで見送ってから、ゆっくりホテルへ戻りました。
そしてまたホテルでネットを見たり、窓の外を見たり、明日は長崎に
向けて出発なので出来る限り荷物の整理をしたりしながら
3度目の応援ポイントへ向かいました。時間が経つにつれて
辛そうな顔のごんぞう氏、勿論今回も補給食は受け取らず、「もう
結構いっぱいいっぱい」と、私に顔を歪めながら言いました。
そんなごんぞう氏の様子に不安になりましたが、昨年もそう言いつつ
頑張って走りぬいた彼ですので、私はきっと大丈夫と信じて
ホテルへの道を辿りました。ホテルに着くと、ロビーではこの日の
夕食となるお弁当が既に用意されていました。丁度引換券を持っていたので
受け取り、部屋へ戻りました。


午後6時10分、私はゴール地点へ向かいました。ゴール地点も
徒歩で10分程の場所で、この立地の良さがこのホテルに宿泊するのを
止められない理由の一つです。ゴール地点では、昨年同様
同伴ゴール希望者の待機場所へ行き、ごんぞう氏のゼッケンナンバーと
氏名、自分の氏名と間柄を書き、彼のゴールを待ちました。
「11時間台のゴールを目指してたけど、何分くらいに来るのかな」
なんて思ってたら「326! 来ました!」との声。私は慌てて
道路へ出て目を凝らしました。と、思っていたより元気な足取りで
チームジャージを着たごんぞう氏が現れました。手元の時計を見ると
6時35分。予想よりもかなり早いタイムです。本人はそうでも
なさそうですが、私の方が感動してジーンとしてしまいました。
そして昨年同様手を繋ぎ、2人でゴールテープを切りました。
正式タイムは11時間36分。昨年より丁度ぴったり1時間短縮です。
「すごいすごい! すごい速かったよ」と言う私に満足そうに頷く彼。
そんな私達に近付いてきたのは、地元テレビ局と思われる人たちで、
何とごんぞう氏はインタビューを受けてしまいました。
「完走おめでとうございます。どうでした? 雨の中のレースは」
「ありがとうございます。大変でしたけどタイムが短縮できたので
よかったです」「ですよね、ゴールの時満面の笑顔でしたもんね」
確かに。あんな嬉しそうなごんぞう氏はなかなか見れません。
彼らと別れてから、「あれ、放映されるのかな?」「私達は
見れなくて残念だよね」などと話し、ごんぞう氏はマッサージを
やってもらい、終わってホテルへ戻ろうという時になって
彼が「寒い…」と震えだしました。見ると半袖の腕にはびっしりと
鳥肌が。大急ぎでバイクを受け取り、ホテルへ帰り、すぐに
お風呂に入ってもらいました。体が温まって人心地着いたし、さぞや
お腹が空いているだろうと思ってお弁当を出したのですが、
「何だか胃腸がおかしくて余り食べられそうにない」との事。
やはり相当無理したのでしょうね。昨年はそんな事なかったので。
いつもは早食いのごんぞう氏、ゆっくり時間をかけてお弁当を食べ、
お疲れ様という事で、この日も早めに床に就いたのでした。


それにしても…昨年は予報では雨が降ると言っていて、実際は
外れて一日中雨は降らないで済んだというのに、今年はその逆で
悪い意味で天気予報が外れてしまいました。
バイクの時が雨は一番酷かったようで、その時に結構ずぶ濡れに
なってしまったようです。それでも私が応援ポイントへ向かった時とか、
ゴール地点でごんぞう氏を待ってる時、そしてゴールする瞬間には
殆ど雨が降ってなかったのが不幸中の幸いでした。