憧れの軍艦島

異国のようです



昨夜のごんぞう氏のいびきで少し寝不足でしたが、
朝、布団から出るやいなや、私はすぐ窓の外を見ました。
どんよりしています。天気予報は局によってまちまちで、
夕方から雨、午後には降り出す、午前中から時々雨、
とにかく、雨が降り出す事は間違いないようです。
私は祈りました。「何とか午前中だけでも降りません
ように…」朝食後、荷造りをして駅までの送迎バスで
長崎駅へと向かいました。と、もうこの時点で空から
ポツポツと雨が…。ああ…願い空しくもう雨が…。
憂鬱になりつつも、長崎駅から路面電車に乗り、
上陸ツアーの船の乗り場へ向かいました。
そんなにはいないだろうと思っていたのですが、
乗り場にはかなりの数の人が。出航までの時間、
受付の建物の奥の部屋で何とB’ZのPVが流されました。
勿論ファンである私は何度も見た映像ですが、思わず
食い入るように見てしまいました。これから向かう
軍艦島を舞台にした映像を見て、私はもとより、
ツアーに参加する他の人たちも感慨深げな様子でした。


そしていよいよ出航の時刻となり、私達ツアー客を乗せた
130人乗りのマーキュリー号は岸壁を離れました。
船は1階と2階があり、最初は1階の座席に全員座り、
ガイドさんの話を聞きます。その後は2階に移ってデッキから
近付きつつある軍艦島を眺めるというわけです。
2階に移ってしばらくはまだ見えてきませんが、やがて
高島の陰から灰色の島影がうっすらと見えてきた時、
周りの乗客達が騒ぎ出しました。「見えた! あれだ!」
私もその方向に目を凝らしました。これまでさんざん
ネットやら写真集やらで見てきましたが、初めて肉眼で見た
軍艦島は想像を絶する存在感で私に迫ってきました。
…何でしょう、これは。ここは…本当に日本? のはずなのに
無国籍な感じのする廃墟の島。隣でカメラマンの役目を私に
命ぜられたごんぞう氏がしきりにシャッターを切っています。
殆どすべての乗客がカメラ、もしくはスマートフォン
向けて写真を撮りまくっています。私も負けじとビデオカメラで
軍艦島を残しつつ、自分の目にもこの光景を焼き付けておこうと
食い入るように島を見つめました。本当に、何でしょう、
この景色。この世のものとは思えない不思議な風景。
船はぐるりと島を一周し、反対側の乗客からも見えるように
反対周りしてからいよいよ上陸の為にドルフィン桟橋に近付きました。
ここで私はドキドキしました。波の加減で上陸出来ないなんて
なったら…島を見る願いは叶ったけど、ここまで来たからには
島に上陸してみたい…。が、そんな私の心配をよそに、船は
あっさりと桟橋に接岸しました。そしてスタッフさんが左右に
1人づつ立ち、乗客一人一人を丁寧に船から降ろしてくれました。


降り立って見上げるのは丘の上に建つ灯台と貯水槽、そして上層の
職員住宅だったという高級アパートの3号棟です。しかしその
当時の高級住宅も、今では窓ガラスがすべて失われ、なんとも
物悲しい有様となってしまっています。私達にとっては見どころのある
遺跡のような存在ですが、実際に住んでいた人たちにとっては
どんな思いなんだろうと複雑な気持ちになってしまいました。
ツアーでは、3つある見学広場でガイドさんの話を聞き、当時の
面影などを想像して…という事なのですが、率直な感想として、
ちょっと遅すぎたのではないかと…。すべての住人が離島して、
もうじき40年。あまりにも建物の傷みが激しく、このままでは
倒壊の恐れがあると思われる建物もかなり多いです。
とはいえ、もう過ぎてしまった時を戻すのは不可能です。
私達に出来る事は、なるべく早いうちに、この島が元の岩礁
戻ってしまう前に、内部も含めて記録を残しておく事だと思います。
その点では、私は建物が残っている内にこの目で島を見る事が出来て
本当によかったと思います。


軍艦島ツアーはあっという間に終わり、船は無事に長崎港に
帰ってきました。港ではスタッフさんが「お帰りなさい」と
迎えてくれ、乗客の皆さんは口々に「ありがとう。よかったです」
と答えていました。心配していた天気も、雨には降られず、
それどころか島では薄日が差して暑いくらいで、サービスで
貸し出された麦わら帽子が大人気でした(私も借りました)。


ツアーが終わったのがお昼少し過ぎで、お昼ご飯をという事に
なりました。そこで私達が向かったのは「長崎新地中華街」です。
これは事前に長崎ではお昼は中華街で食べようと決めていて、
あとはお店はどこにしようという事だけです。ごんぞう氏は
どこでもいいと言っていましたが、私は19年前にこの中華街の
あるお店で食べたちゃんぽんが忘れられず、迷った挙句、
そのお店に入りました。注文は私は当然ちゃんぽん、
ごんぞう氏は皿うどんにしました。そして、出てきたちゃんぽんは
19年前と変わらず、絶品でした。普段、私はラーメンに入っている
もやしが嫌いで、ごんぞう氏にいつも食べて貰っていたのですが
このお店のちゃんぽんに入っているもやしは平気なのです。
それも「食べられる」ではなく「美味しい、むしろ入ってないと
寂しい」と感じるほどなのです。そもそも、ラーメン自体
私はあまり好きではなく、ラーメン屋さんに入っても
ごんぞう氏はラーメン、私はチャーハンというように、ラーメンは
頼まないのですが、このお店のちゃんぽんは別物で、19年前に
このお店で食べた時も、余りの美味しさに次の日もこのお店で
ちゃんぽんを頼んで食べた位なのです。全く変わっていなかった
美味しいちゃんぽん、この味がこっちでも味わえたらいいのに…。


昼食の後は、路面電車グラバー園へ行き、洋館めぐりをしました。
しかし…ごんぞう氏は今頃になって脚が筋肉痛で痛いと言い出し、
いつもなら早く歩くのにゆっくりしか歩けません。しかも長崎は
坂の多い町、グラバー園の園内も例外ではなく、あちこち登り坂だらけ。
私だけでも元気ならまだよかったのですが、ごんぞう氏の覇気の
なさがうつったのか、ホテルと応援ポイントの往復で脚にダメージが
蓄積されたのか、今にも雨が降り出しそうなジメジメした蒸し暑さも
手伝って、私まで一気に疲れてきました。そうこうしているうちに、
とうとう雨が降り出し、私達はグラバー園を後にしたのでした。


路面電車長崎駅に着いた頃には、雨は結構本降りになって来て
私達は駅から高速バスで長崎空港へ向かいました。
バスの車内では、2人とも疲れて眠ってしまい、目覚めたら
空港に到着していました。空港内でお土産などを買い、
帰りの飛行機は行きとは違って定刻よりも早くセントレア
到着しました。いつもなら空港内の美味しい天丼屋さんで夕食をとり、
旅の締めくくりとするところですが、今回到着が午後9時を回っており、
天丼屋さんは勿論、ほとんどの飲食店が閉まっていて、
探し回った挙句、10時まで営業していた若鯱屋で夕食をとり、
11時40分、無事我が家に帰宅しました。


今回の旅行で、ごんぞう氏の目標だったトライアスロンでの
時間短縮、私の願いだった軍艦島上陸ツアー、どちらも
叶ったので、本当に良かったです。次は8月の北海道ですが、
目標タイムはどのくらいなのかな…。